ホテルふじ/Hotel FUJI
entrance renewal

所在地 :山梨県笛吹市
主要用途:ホテル(エントランス・カフェ改修)
竣工  :2008年4月
延床面積:780u(改修部)
     650u(中庭ランドスケープ)
規模  :地上1階
構造設計:鈴木啓/A.S.A
設備設計:環境トータルシステム
照明設計:内藤真理子/コモレビデザイン
施工  :樋川建設
掲載誌 :iA interior/ARCHITECTURE 10
    :iA interior/ARCHITECTURE 12
    :サライ増刊号
    :至福の時を味わう癒しの宿
写真  :小長谷亘






山梨・石和温泉の築40年のホテルのエントランスリニューアルプロジェクト。
構造的な制限により基本的に平面的にも断面的にも屋内空間の大きさは変えることができないが、単なる仕上材の貼り変えとは別次元の空間の質の変化を実現を目指した。

ホテルは市街地に建っており、上階の客室からは富士山を望むことができるが、改修エリアはこれといった風景に恵まれてはいない。ただエントランス脇にはプールを囲むような中庭があり、そこはホテルにとって特別な場所に感じた。そこで、以前は屋内からやや遠くに感じられた中庭への連続性を高めることで、エントランス空間を再構築することにした。
まずは 中庭に面する開口を構造上許される限り広げ、耐候性鋼によるルーバーを内外に連続させた。それにより、建物奥へと自然光を導くと同時に、山梨の強い日の光を柔らかくもしている。また天井ルーバーの他、床タイルも内外同じ素材とすることで、内部と外部との境界を弱め空間の特殊性を高めている。また、このホテルには既存の柱が多い。そのため、それぞれのスペースを新たに壁を設けて区切るのではなく、天井素材を切り替えていくことで緩やかに空間を分節することにした。

今回改修をしていないエリアには洋風の箇所も和風の箇所もある。ルーバーは寸法やピッチを変えることでどちらの表現にもなりえる要素でもあるため、今後の別エリアの改装についても有効に働くのではないかと考えている。




ルーバー部の照明については、あえてルーバーに直に照明をあてることを避けた。
ルーバーの間からスポットライトで床面や家具や人を照らし、そこから反射した淡い光がルーバーを照らす。単に照らしただけでは素材の表情は単調になってしまうが、一旦空間やアクティビティに光を預けることで、生きた照明となる。
スポット照明の他には、上部にも淡く光の漏れる家具的なスタンドなどを配置し、ルーバーの表情に奥行を与えた。中庭プールに設置した水中照明から水面を通して漏れた光が、ルーバーを淡い青色に染めたりもする。

ホテルに訪れる人にはリピーターも多い。
そのため、このホテルを長年見守ってきた中央廊下のシャンデリアを、『記憶』として残すこととした。

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