Obidos

小高い山の上に広がる城壁に囲まれた人口800人ほどの小さな城郭都市。リスボンより高速バスで日帰りで向かう。
元はローマ時代にムーア人により築かれた街。12世紀にアフォンソ・エンリケスに征服され街が再建、その後13世紀に時の王妃イザベルがこの街に魅了されてしまい、ディニス王が街をプレゼント。以後1834年まで代々の王妃の直轄地なり、現在も中世のままの姿をとどめている。 箱庭のような町。


まずは城郭外のバス停に到着。近くインフォメーションで地図を貰って城郭の中へ。
メインゲートの「ポルタ・ダ・ヴィラ」。オビドスのメインゲートで敵の侵入を防ぐためかクランク状になっている。アーチ状の通路の内側はアズレージョで覆われている。 アーチ空間の写真はガイドブックで必ず使われるアングル。写真には露天商の老婆が必ず座っている。行った日もまさしく同じ場所に(おそらく)同じ老婆が刺繍を縫いながら座っている。まるでこの街の時間を管理しているかのよう。この門をくぐることで、時間も空間も揺らぐような感覚を覚える。

アズレージョとは装飾タイルのことで、ポルトガル各地で見ることができる。15世紀にポルトガルに伝わったらしいが意外と歴史は浅くも思える。カラフルなものもあるが、大半は白地に青で描かれている。 全体として大きな絵となっているが、大きなタイルに描かれているのではなく、120〜150mm角くらいのタイルに分割されている。

門をくぐり抜けると一転、白い街が目に飛び込んでくる。
オビドスのメインストリート。石畳の両側には、ほとんど二層以下の建物。漆喰の白い壁の足元や外壁端部には黄色や青で着色がなされているが、これはオビドスの旗の色からきているとか。道のあちらこちらにある花壇や壁、窓際に掛かっている植木鉢の緑が、街の雰囲気を明るくしている。緑はよく手入れをされているようだが、いかんせん冬だったので花はほとんどなかった。季節のよい時期はもっと鮮やかなはず。 この道は観光客の通り道ともなっているので、少し商業的な装飾が多い。緑も少し気合が入っている。 。

メインの通りからはずれた場所を歩いてみる。
メインストリートよりも人の賑わいも飾りも明らかに少ないが空間は豊か。 2つの尾根に挟まれるように街ができているため全体的にいろいろな角度で勾配があり、それがまた様々な街の風景をつくりだしている。
建物は基本的に一定のルール・エレメントで作られているが、地形や道との関係でいろいろと形状が変わる。でも大きく外れた建物はない。サイズ、色、素材だけではない、見えないデザインコードがあるようにも感じる。

オビドスの建物のディテール。

屋根の端部をよく見ると2段積んでいるようにも見える。端だけかもしれないが、水切りや通気を兼ねているのかもしれない。 軒樋はない。雨はそのまま通りに落ちます。そういえば通りの側溝は外壁面から50cmくらいの位置にあったので。ちょうど水が落ちる位置にしているのかもしれない。

屋根面と城壁。地域の土の色と石の色がそのまま街として立ち上がっている印象。


煙突(換気口?)の先端には家のような装飾がある。少し神殿風の形状の家が多い。

教会。 庶民的な規模の建物で入口もそれほど構えてはいないが、中に入ると壁一面に貼られたアズレージョが目に飛び込んでくる。独特の空間。 ガイドブックをみてみたら、この教会よりももっとアズレージョを顕著に使っている教会があることに気づく。急ぎ向かうも、クローズド。(シエスタ?)残念です。 写真では壁だけでなく、ボールト天井面もアズレージョに覆われていた。是非見ておきたかった・・。

その教会の正面。サンタ・マリア教会。手前にはちょっとした大きさのサンタ・マリア広場がる。この街に合ったスケール。
広場の脇には「罪人のさらし柱」の意を持つペロリーニョという柱が立っている。柱の中ほどのくぼみは罪人をみせしめにカゴに吊るした際にあたった金属の輪の跡だとか。。

広場脇の建物の軒下空間。街の人がぼんやり佇んでいる。軒のスケール、日の入り方、広場との高低差など、古の設計者。なかなかやる

一番奥にある古城跡。現在はポサーダ(修道院などを改修した国営の宿)として利用されている。ポサーダの中でも特に人気があるらしい。

ポサーダの町から街を囲む城壁に上がり、町を周遊。天気がよいので気持ちが良い。町が一望でき、全体の高低差や構成がわかる。 1つの建物がいくつもの建物の集合でできていたり外壁がそのまま延長して庭の塀になっている。結果、建物のスケールを小さくできたり、外部との様々の関係性をつくりだせたりし多様な風景を生み出している。佇んでみたい場所がいくつもみつかる。

ところどころ、とてもコンパクトな教会もある。日本の小さな稲荷神社みたいな感じ。

気づくと結構な高さにいることに気づく。片側は手摺もないのですれ違うには少し怖い。登り降りできる箇所も数箇所に限られる。 途中まったく降り口が見当たらず結局しばらく歩くことに。
町の端部に向けさらに歩いて行くと、高い位置にあったはずの城壁の通路付近まで家が迫ってきている。端の城跡とその反対側の町の両端が少し小高くなっているようだ。結局降り口がなく町の端から端まであるくことに。

結局城壁の端まで来てしまった。完全に町のはずれ。正面の緑は塀で囲まれた個人の庭。綺麗な街に住み、広くはないが心地良さそうな庭を持つ生活。贅沢。城壁の外には雄大な景色が広がっている。

初めに歩いたメインロードも見える。


城壁のすぐ外に墓地がある。ずいぶんと明るい感じの墓地で石棺のようなものからそのまま土葬にしたようなものまで並んでいる。

ESPACO OPPIDUMという店にふらっと立ち寄る。 ガイドにはほとんど載っていない。 10畳ぐらいの広さのお店でお皿や置物の焼き物を売っている初老の御夫婦2人のお店。
旦那さんがレジに座りながら素焼きの器に絵付け。どうやら奥さんが器作りと焼きをしているようだ。店には二人が作ったものだけが並び、独特の世界が満ちてます。 シンプルですが、心引かれる絵。
写真は8cmほどの小さなお皿ですが、30cmくらいのお皿を購入。壁掛けや置物もあり、見ていると全部ほしくなってきます。一旦店をでて食事をしたあと、もう一度お店によりもう少し購入。。
夫婦で作品をつくり、ひとに喜んでもらいながら買ってもらい、それらに囲まれながら過ごす生活。思わず涙が出そうになります。けっして大げさな表現ではなく。大皿2枚、小皿3枚、置物4つ。なんだかこの空気感少しでも持って帰りたくて、おもわずいくつも買ってしまった。でもあまりいっぱい買うのもお店の世界を壊してしまいそうで躊躇う。 いつかまた行きたいお店。

最後に向かいのお店でジンジーニャを買う。個人的にかなり気に入っている。しっかりサクランボが入っているのが本場。
2013年現在、まだ家に大事に保管。日本で購入できるところを見つけられていないのが残念。

メインどおり沿いのレストラン、『Alcaide(アルカイデ)』地元の人向けではなさそうだが、それほど高級でもなさそう。先程入ったお土産屋さんの作品が飾られている。
出てくる料理はかなり美味しい。今回の旅行で文句なしに最高の料理でした。

まずはGinja(ジンジャ)で乾杯。Ginjaはさくらんぼを漬け込んだお酒。特にオビドス産は品質が良いことでしられているそうな。地元ではGinjinha(ジンジーニャ)と呼ぶ。かわいらしいグラスで登場。 結構、甘口。でもアルコールは20%近くと高め。グラスの形状が少しずつ飲むのに適していていい。しかも下の膨らみでなかなか減らず、長いこと楽しめる気に。

私のメインデイッシュの料理。かなりの絶品。
アヒルの胸肉のロースト。ほとんど臭みのない柔らかくほのかに甘いローストに、少しすっぱいオレンジソースがかかっている。素材の味が素直にでているのだが、経験にない組み合わせ。 サイドの蒸しキャベツや、ジャガイモの生クリーム和えも旨し。 あああ。ほんとに絶品。

妻のメインディッシュ。バカリャウの揚げに野菜。リスボンよりもはるかに繊細な味付け。これまた旨し。

デザートのケーキ。
ラズベリー(クランベリー?)とほとんど一体になったプディングに生クリームがついている。かなり濃厚そうに見えるが、食べてみるとほどよい酸味と甘み。これまた・・。

しかし全体的に日本人の舌に何でこんなに合うのだろうか。 ランチコースを食べて二人で36ユーロ。(このほかにパン、コーヒーも)お酒も飲んでなのでとても良心的。

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