Marrakech Night

夜、フナ広場へと戻る。朝と同じカフェ(Cafe de France)に再び入り、一服。昼とは全く広場の様子が変わっている。
昼間大道芸人たちがいたところには、いつの間にかたくさんの屋台が。そこからは光と人と蒸気があふれ出している。ものすごい賑やか。見たこともない風景。
しばらく眺めていると、あちらこちらのモスクからコーランを斉唱する声が一斉に響いてきた。礼拝の時間のようだ。コーランは街のあちこちのモスクからきこえてくるので、まるで街全体が合唱をしているかのよう。スピーカーで拡張されたコーランの声とフナ広場の夜の風景にしばらくぼうっと過ごす。それにしてもはるか異国に来たものだ。そのときの感覚を今でも体が覚えている。

フナ広場沿いの新スークのお店からは様々な光が漏れてきている。手前の屋台はオレンジジュースのお店。白熱灯だけでなくところどころで蛍光灯が使われているが、これがすべて蛍光灯になってしまったら風景は一変してしまうのかもしれない。
夜目立つのは照明器具のお店。金属製シェードのランプや薄くなめした革でつくったランプなどが定番。
新スークへの路地は夜は一段と賑わっている。スークは日没でお店を閉めるところが多いが、ここは少し遅くまでお店が開いているようだ。
カフェから一番近いモスクにもまだ人が出入りしている。モロッコ人も全員モスクで礼拝しているわけでもなさそう。祈りの時間も普通に商売したり、観光したりしている。それでも礼拝の時間となると足早にモスクに出入りする人の姿が多くみられた。

夜のフナ広場周辺を練り歩く。 昼以上に人が入り乱れている。ところどころで講談師みたいな人がいて、その周りを人が囲んでいます。政治ネタ?教育ネタ? 無数のランプが賑やかさをさらに高める。外灯などという無粋なものはない。

まだお店が開いていたので新スークに入ってみる。スーク街は6,7時には店が閉まってしまうが、広場周囲の新スークは夜まで開いています。中に入ると昼とは別の顔。

広場に戻りいよいよ屋台を物色。近寄ると様々な匂いが押し寄せてくる。しかしとにかく賑やか。

屋台は何列にも整然とならびいくつかの街区と通りをつくっているかのよう。通りは大勢の人と客引き。さすがにカメラを構える余裕なし。小さな屋台から、多くの客席を用意した大きな屋台まで様々。
お客はヨーロッパからの観光客やモロッコ人観光客が大半の様子。意外と彼らは団体のまま一つのお店に入っている。よっぽど日本人観光客の方がフリーランスに動き回っている。(もっともモロッコに来るような少数の日本人観光客は、団体行動を好まないフリーな感じの人ばかり。)
店先に並んだ食材・料理を見ながら徘徊。途中メニューを持った客引きに何度も声をかけられる。日本人ということはわかるらしい。ある店では妙なジェスチャーをしてからこっちの胸に指を差し、「ミヤサコデス!」と話しかける妙な店員が。彼の必殺技らしい。日本人観光客、あまり変なことを教えないように。何年経ってもやり続けているので。

外国人観光客よりもモロッコ人で賑わっている屋台に入ってみる。いくつかの鉄板の周りに調理をしているおじさんが5,6人。お客のカウンターはそれを囲むようにロの字に配置され、接客は主に若い兄ちゃんや少年たち。脇では、肉やソーセージを鋏で切ったりと仕込みをしているおじいさんが。 ソーセージやモツ肉を勢いよく焼いている。
少々ぼられそうだったが、怪しい料理の誘惑に誘われた。 頼んだ料理はソーセージやパンと、「テハン」と呼ばれる肉料理。どうもレバーの腸詰を細かく切って焼いている感じ。トマトをつぶして香辛料をまぶしたソースにつけながら食べたがなかなか美味しい。完全にB級グルメという感じだが。ところどころ生っぽいところはさすがに避けるようにしながら食べた。バケツからよそった水も出てきましたが、バケツを覗くと少し濁っている。。危険がいっぱい。
会計をするとちょっとぼられていたので、少し文句を言う。勿論英語は通じず。小銭を用意しておいて正解。ちょっと前に会計していたモロッコ人若者組も似たようなやりとりをしていたので、全員に挨拶代わり(?)にしているようでもある。お金を渡すと、仕込みをしているおじいさんのところに行きお金を渡している。どうやら店主だったらしい。

なかなか貴重な体験。腹を壊さないか心配しながらお店をあとにする。 後日泊まっていた別のホテルから再び夕食に広場に向かおうとすると、ホテルマンに「やめたほうがいい」と真剣に留められました。どうもフナ広場の屋台はどこも「NOT FRESH」なようで、モロッコ人でもやられるらしい。しょっちゅうホテルで苦しむお客の面倒をみてきたとのこと。季節が良かったのか、なんとか我々は無事に済んだ。とはいっても、こういう所には寄らずにはいられない。。今までなぜかあたったことはないのが幸い。

少し口直しにオレンジジュースの屋台に寄ってみる。昼間にもフナ広場にありるが、夜になると数が増えている。その中ですこし誠実そうな青年の屋台を選ぶ。
手際よくナイフでオレンジの皮をむき、簡単な道具を使って絞りはじめる。文字通りストレート果汁。酸っぱさと甘さが程よい。美味しい。一杯3DH(約45円)。モロッコにしてはめずらしくきちんと表示が出ていました。少し会話をして記念に写真を。握手をして別れるとき「また来てよ」「屋台のナンバー『49』を覚えておいてくれ」といわれる。指さされた方をみると、番号札がついている。

数日後フナ広場に戻ってきたら、少し別の場所に『49』の屋台と同じ青年が。またジュースを飲みに行くと、向こうも覚えていてくれたのか再会を楽しむ。ジュースも少しサービスしてくれ、「また来てよ」といわれるが翌日はマラケシュを立つ日。あらためてお別れの握手をすると今度は「またモロッコに来て」と。そうそう簡単には来られないけど、たぶんまたいつか来てしまう気が。 そう思わせられる国。

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